20世紀前半に活躍した英国の作曲家、レイフ・ヴォーン=ウイリアムスの作品には英国各地やアイルランドの民謡をモチーフにしたものがいくつかありますが、その中でこの曲は聖書「ルカによる福音書」16章19節以降の箇所がイングランド各地で伝えられた5つの民謡のメロディを編曲・編集したものです。

 

 

Five Variants of “Dives and Lazarus” · Bryden Thomson · London Philharmonic Orchestra · Ralph Vaughan Williams

℗ 1999 Chandos Records

Released on: 1987-02-01

Associated Performer: Ralph Vaughan Williams
Associated Performer: Bryden Thomson
Associated Performer: London Philharmonic Orchestra
Composer: Ralph Vaughan Williams

まさにあの箇所にぴったりの雰囲気でなるほどと感心させられますが、堅苦しくなく疲れたときにBGMとして聴くのにもぴったりですね。

指揮者のブライデン・トムソンは英国音楽のスペシャリストで、スコットランドや北アイルランドのオーケストラで活躍し、それまであまり知られていなかった作品を含む多くの曲を録音し、ロンドンの有名オーケストラでの指揮・録音も増えてきていよいよこれから円熟期というところで亡くなってしまったため日本での知名度は低いですが、素晴らしい演奏を多数遺してくれました。

ところで、この作品の中で最初に登場するメロディのオリジナルであるイングランド民謡は、アイルランドでは’The Star Of The Country Down’という題名でケルティック・ミュージックのスタンダードとして親しまれ、多くのミュージシャンによって演奏、レコーディングされています。
但し、歌詞は「富める人とラザロ」とはまったく関係ない「片思いする男のラヴ・ソング」ですし、テンポもヴォーン=ウイリアムスの作品よりかなり早くなっています。
その中から代表的なものをひとつ。

あくまでも想像にすぎませんが、オリジナルのイングランド民謡もこれほど早くはなくむしろヴォーン=ウイリアムスのほうに近かったのではないでしょうか。

 

上越聖書バプテスト教会教会員 山田 正